


世界中で話題になっている「SDGs」。日本でも、SDGsの17の目標に沿った事業に取り組んでいる人がたくさんいますよね。
実は伝統工芸のクリエイターの方々も、今ではSDGsに関心を持って取り組んでいる方が多くいらっしゃいます。
それぞれの方が今、日本の工芸を未来に残すために、多くのクリエイターが新しいアイデアを生み出して活動しています。そこで今回は、SDGsに貢献している工芸クリエイター5人と、その事業内容についてご紹介しようと思います。
彼らの取り組みや考え方を知ることで、SDGs×工芸の新しい価値に触れることができるでしょう。
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まず1人目の工芸クリエイターは、陶芸家のジェレミー・パレ・ジュリアンさんです。
ジュリアンさんはカナダ出身ですが、焼き物の高い技術を学ぶために、2020年日本へやって来ました。現在は、佐賀県有田町にある有田焼の窯元「幸楽窯」で作品を制作しています。
では、ジュリアンさんは一体どんなSDGsに取り組んでいるのか?
それは、有田焼の失敗作を利用した、新しい商品開発です。
有田焼の失敗作には、薄茶色のヒビのような模様が浮き出ていました。その模様は、土に含まれている水分が染み出して釉薬の下に溜まったもので、「ミミズ」と呼ばれています。(ミミズがはっているようにも見えるため)
ミミズが入った有田焼は、「見た目が美しくない」という理由で廃棄されていました。しかしジュリアンさんは「こんなに素晴らしい作品なのに、棄てるなんてもったいない」と思い、ミミズを活かした新しい商品開発を考案。
ジュリアンさんはミミズの部分を筆でなぞり、木の枝や花に見立てたデザインを生み出しました。本来なら廃棄されるはずだった有田焼の作品が、ジュリアンさんのアイデアのおかげで美しい作品へと大変身。
このアイデアは「ミミズ・プロジェクト」と呼ばれ、注目を集めています。
2人目の工芸クリエイターは、ジュリアンさんと同じく幸楽窯で働いている、ブラジル人のピメンタ・セバスチアオさんです。
幸楽窯には、せっかく作ったのに使われていない有田焼の作品がたくさんありました。ピメンタさんはその有田焼を見て、「使わないなんてもったいない」という思いを持っていました。
そこでピメンタさんは、幸楽窯に放置されていた大量の有田焼を利用した、「トレジャーハンティング」という企画を考案しました。
トレジャーハンティングでは、料金5500円もしくは11000円のコースのどちらかを選び、有田焼をカゴに詰め放題で購入することができます。
宝探しの感覚で楽しめる購入企画で、お客さんもワクワクしながら器を手に取り、カゴから溢れそうなくらいたくさん詰め込んでいます。毎月100組以上のお客さんがトレジャーハンティングに参加していて、とても人気が高いです。
今ではこの企画は、幸楽窯の大事な収入源となっています。
先にご紹介したジュリアンさんとピメンタさんのどちらも、「棄てるなんて(使わないなんて)もったいない」という思いから、これらのアイデアを生み出しました。外国人2人による、SDGsに貢献した工芸の新しい取り組みです。
3人目の工芸クリエイターは、寄木作家の中村建治さんです。
中村さんは、鳥取県日南町にある「白谷(しろいたに)工房」という場所で、寄木細工を利用した作品を制作しています。
中村さんは2021年から、ヒノキやサクラなど17種類の木を使った、寄木のSDGsバッジを制作し始めました。色味や木目の出方がそれぞれ異なる木で、SDGsの公式ロゴマーク「17の目標」を表しています。寄木で組み合わされた丸いバッジは、繊細で可愛らしく、木の温かみが感じられる作品です。
17種類の木は、住宅や学校を解体した際に出た木材から集められたものです。解体で出た木材は、産業廃棄物で捨てられることが当たり前でした。しかし、中村さんはそれについて「もったいない」と感じ、違う形で木を残す方法を考えました。
そこで思いついたのが、寄木のSDGsバッジだったのです。2021年4月の時点で300個以上のバッジを制作し、今では県内・県外の企業や個人からの注文が殺到しています。
中村さんは、「木を大切にしたい」「寄木のバッジをきっかけに、SDGsの取り組みについてみんなに知って欲しい」という思いを持ちながら、制作に励んでいます。
寄木のバッジがどんなものなのか気になる方は、一度チェックしてみてはいかがでしょうか?
4人目の工芸クリエイターは、大洲和紙の工房で働いている斎藤宏之さんです。
斎藤さんは、愛媛県大洲市の伝統工芸である大洲和紙の技法や職人を、未来に残すための事業に取り組んでいます。
大洲和紙は、主に書道用半紙や障子に使われていました。しかし、斎藤さんは大洲和紙に“ある技術”を組み合わせたことで、注目を集めました。一体、どんな技術を組み合わせたのでしょうか?
それは、「ギルディング」という金属箔を使った装飾技法です。ギルディングはフランスの伝統工芸で、絵画の額縁に装飾を施すために用いられます。
斎藤さんは、自然素材の和紙と、鉱物素材の金属箔を組み合わせた「ギルディング和紙」を生み出しました。全く違う2つの素材が絶妙に融合し、唯一無二の存在感と美しさを放っています。
ギルディング和紙は、フランス・パリで開催されたデザインイベントで注目を集めました。その他に、若い世代にギルディング和紙を体験してもらうためのワークショップを開催するなど、SDGsに沿った事業に取り組んでいます。
ギルディング和紙の事業をもっと知りたい方は、ぜひインターネットでチェックしてみてくださいね。
最後にご紹介する5人目の工芸クリエイターは、ガラス工房で働いている郡司昇さんです。
郡司さんは北海道網走市にあるガラス工房で、SDGsに貢献した事業に取り組んでいます。その取り組みは、蛍光管のガラスを利用したガラス細工作りです。
廃棄される蛍光管は年間約8000tほどあり、鉱業所でリサイクルされています。郡司さんは、そのリサイクルされた蛍光管のガラスが、ガラス細工作りの原料に適していることを知りました。そして今では、鉱業所から毎年約10tのリサイクルガラスを届けてもらい、ガラス細工作りに利用しています。
SDGsが話題になっている今、蛍光管のリサイクルガラスを使ったガラス細工作りの取り組みへの関心度は、非常に高まっています。
しかも、リサイクルガラスは炉で溶けやすい性質なので、通常のガラスを溶かすよりも燃料排出を抑えることができます。環境に優しい、素晴らしい素材ですね。
郡司さんのSDGsを意識した取り組みが、今後どのように進化するのか、とても楽しみです。
上記でご紹介した工芸クリエイターたちの「伝統を終わらせたくない」「新しいアイデアで工芸をもっと盛り上げたい」という強い思いが、伝わったでしょうか?
工芸クリエイターたちは、SDGsを意識した考え方を取り入れて、工芸の新しい魅力を引き出しています。そして、新しい魅力を発揮した工芸が生み出されることで、経済の成長に繋がりますし、若い世代からの関心度も高まります。
今後の彼らのSDGsを意識した取り組みや、工芸の注目度がどう進化していくのか、非常に楽しみです。
今回ご紹介した工芸の中で、あなたが気になるものがありましたら、一度チェックしてみてはいかがでしょうか?
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
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工芸のクリエイターは、どんなSDGsに取り組んでいるのか?日本の伝統工芸を未来に残すために、新しいアイデアを生み出して活動している現役の工芸クリエイター5人と、その事業内容をご紹介します。