


日本が海外に誇る伝統文化の『着物』。多くの日本人が、一度は着用したことがあるでしょう。
しかし現代では、着物の需要が年々減少しています。コロナが流行った影響で着物を着る機会はさらに減り、職人や呉服店はかつてない厳しい状況となっています。
そんな状況を変えるために、日本の着物と海外の民族衣装をコラボさせて新しい価値を生み出そうとする取り組みが始まりました。今回は、その取り組みについてご紹介させていただきます。
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まず最初に、着物の需要について簡単にお話しします。
着物の需要のピークは1980年ごろで、市場規模は約1.8兆円でした。この頃の着物は正装だけでなく、普段着として着用する人が多かったです。
しかしその後、日本人の服装は動きやすいカジュアルなものへと変わっていき、着物を着る人が少なくなってしまいました。需要は年々減少し、2021年の市場規模はピーク時に比べて6分の1(約2700億円)にまで低下しました。
2020年の初めに流行り出したコロナの影響で、着物業界はますます厳しい状況に追い込まれました。
緊急事態宣言や外出自粛により、観光地で着物をレンタルする人が激減したり成人式や結婚式がなくなって着物を着る機会がなくなったりなど、大きな打撃を受けました。コロナがきっかけで経営が悪化し、営業を終了したお店や仕事を失った職人さんはかなり多かったです。
そんな厳しい状況を変えるために、着物を使った新しい取り組みが始まりました。
着物業界の未来や職人の技術継承のために、着物と海外の民族衣装をコラボさせた取り組みが始まりました。
この取り組みは京都にある「京都工芸染匠協同組合」と『京友禅』を扱う企業や人々が携わり、海外のある民族衣装と組み合わせて新しい価値を生み出し、着物を海外へ広めようと試みたのです。
では一体どこの国の民族衣装とコラボしたのか、気になりますよね。下記からは、コラボ内容について詳しくご紹介します。
京友禅とコラボした海外の民族衣装は、インドの『サリー』です。サリーはインドの女性たちが身体に巻き付けている色鮮やかな民族衣装で、幅約1メートル・長さ約5メートルほどの大きな一枚布でできています。
この取り組みの対象国をインドにした理由は、インドが経済大国としての大きな可能性を持っているからです。経済成長が期待できるインドに日本の着物を取り入れて、その価値が認められた場合、新しい市場を開拓できると考えられます。日本の京友禅職人の技術とインドのサリーを掛け合わせることで、新たな魅力や価値を生み出せるかもしれません。
こうして、京友禅サリーの開発が始まりました。
京友禅サリーの制作開始から完成までの間、いくつかの課題が生じました。ここでは、その課題を2つご紹介します。
①模様の見え方
1つ目は『模様の見え方』です。
サリーは着物と違って長い布を身体に巻きつけるので、当然模様の見え方も着物とは大きく異なります。場所によっては、模様が全く見えなくなってしまう箇所もあります。
それを避けるために模様の配置を一から見直し、確実に模様を見せられる箇所(布の端部分)を見つけて配置し直しました。
②布の大きさ
2つ目の課題は、『布の大きさ』です。
サリーの布幅は、着物の幅と比べて約3倍の大きさです。着物に描く模様の大きさでは小さく目立たなくなってしまうので、サリーの布に描く模様も約3倍の大きさにして作る必要がありました。
しかし、模様が大きくなると染めの工程で色ムラが出やすくなります。色ムラが目立つとせっかくの美しさが損なわれてしまう恐れがありましたが、職人たちはあえて模様に濃淡をつけたり、ぼかしをつけたりなどの工夫をしました。
職人たちの熟練の技術のおかげで、鮮やかで美しい模様を施すことができました。
京友禅サリーの魅力はやはり、通常のサリーにはない京友禅ならではの淡い色使いと模様です。
通常のサリーは布の色がビビットなものが多いのですが、京友禅サリーは淡い色使いで柔らかな印象を受けます。布に描かれた日本の伝統模様は、主張しすぎない静かな美しさを持っています。身体に巻き付けて歩くと布がヒラヒラと揺れて、とても優美です。
サリーのエキゾチックな雰囲気と日本らしさが融合し、今までにない新しい魅力を持つ民族衣装となっています。
ここまで、日本の着物と海外の民族衣装のコラボについてご紹介いたしました。
今回ご紹介した京友禅サリーは、通常のサリーと着物それぞれの特徴や雰囲気が融合し、新しい魅力を持った民族衣装です。京友禅サリーの価値が認められれば、海外への市場開拓につながるでしょう。
現代の着物需要の回復や職人の技術継承のために始まったこの取り組みが今後どのように発展するのか、とても楽しみですね。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
京友禅サリーの参考記事URLを下記に貼っておりますので、気になった方はぜひご覧ください。
京友禅サリーで、日本の卓越した技術を誇る手しごとを世界へ
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日本が世界に誇る伝統文化の『着物』が、需要の低下やコロナの影響で厳しい状況となっています。この現状を変えるために、日本の着物と海外の民族衣装をコラボさせ、新しい価値を生み出そうとする取り組みが始まりました。