


SDGsは、2015年9月の国連サミットで国連加盟193か国によって採択された、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。2016年から2030年の15年間で達成するために掲げられた目標は各国・各組織だけでなく、皆が協力しなければ達成できる目標ではありません。発展途上国・先進国と国の状況を問わず、地球上のほぼすべての人が共通の目標を持ち、達成に向けて取り組む必要があります。
目標17ではその共通の認識を持った人同士の繋がりに着目し、パートナーシップを高めることが狙いです。ここで定義するパートナーシップとは、様々な立場から知識や技術、資金を集めて共有し連携を強化し、持続可能な開発のための世界的な協力関係を築くことです。
また目標17は特定の課題ではなく、目標1から16までを達成するためのパートナーシップを強化することを目指しています。
では、SDGs目標17『パートナーシップで目標を達成しよう』を実現するために何が必要なのでしょうか?今回はSDGs目標17に焦点を当て、スタートアップとしてできることを考えていきます。
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SDGs目標17では下記の項目でターゲットが定められています。
・資金
・技術
・能力構築
・貿易
・体制面(政策・制度的整合性)
・マルチステークホルダー、パートナーシップ
・データ、モニタリング、説明責任
この中でも今回は、今後特に必要になってくる「資金問題」と「技術格差」について紹介します。
目標達成に必要な資金の問題
SDGsの達成には、様々な施策だけでなく多額の資金が必要です。国連貿易開発会議(UNCTAD)の試算によると、2030年までにSDGsを達成するためには、途上国で年間2兆5000億ドルの資金が不足していると言われています。
資金面を解決するべく、経済的に連携する機関として公的資金(開発協力)、民間資金、非営利団体(NPO・NGO)があります。公的資金は政府開発援助(ODA)と言われ、政府の資金で実施される開発途上国への援助・協力することです。
日本はODAに1954年から参加し、これまでに190の国や地域への支援を実施してきました。SDGsを達成するにはODAの増額に加え、民間のあらゆる資金の動員が必要になってきます。
近年では2008年の世界金融危機の影響で、アジアを中心に途上国の債務負担リスクが少しずつ上昇しており、ODAを増やすだけでなく途上国の債務持続可能性を考慮する必要があります。
各国で広がる技術格差
また近年では金融面だけでなく、デジタル・ディバイドと呼ばれる、インターネットを含む情報通信技術(IT)の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差が問題になっています。この格差はITの利用機会や利用能力に関して定められています。
2016年の移動系ブロードバンドの100人当たりの加入数は、先進国で94.4人、途上国で43.6人、後発開発途上国では19.1人と大きな開きがあります。
ITを普及させることは、政治的には民主化の推進や経済的には労働生産性の向上、文化的には相互理解の促進等に貢献すると考えられるため必要不可欠です。
SDGsにおける「パートナーシップで目標を達成しよう」の正式目標は「持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」とされています。
SDGs1〜16の目標を達成させ、持続可能な開発アジェンダを成功へと導くためには、国や政府、地域だけでなく社会全体のパートナーシップが必要です。地球上の誰一人として取り残さないことを誓っているSDGsに取り組む上でのパートナーシップとはどのような定義なのでしょうか?実際にSDGs目標17における、19個のターゲットを見ていきましょう。
1 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。
2 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。
3 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。
4 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。
5 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。
6 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。
7 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。
8 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。
9 すべての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。
10 ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の結果を含めたWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。
11 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。
12 後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、すべての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。
13 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。
14 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。
15 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。
16 すべての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。
17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。
18 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。
19 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。
(出典:農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/sdgs_target.html#goal_17)
目標17では世界中の国家だけでなく、企業から個人まで全ての人がが一丸となって積極的に取り組むことにより、世界の人々が平和に暮らせる環境づくりに繋がります。
前述の19個のターゲットを踏まえて、日本の企業やスタートアップはどのような取り組みをしているのでしょうか?パートナーシップで目標を達成するために行われている事例を3つ紹介します。
【株式会社Kaien】
Kaienは発達障害(広汎性発達障害、ADHD、自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群等)の方に特化したサービスを展開しています。就業支援や学習支援の現場で、常にご家族をはじめ、各組織と連携を取ることによりサービスの改善を図り、セミナーや合同イベントなども頻繁に企画しています。
また、パートナーシップ制度を設け、全国の企業・団体がKaienのノウハウを活用し、ひとりでも多くの発達障害者が有意義な人生を送る一助となるよう、サービスを展開しています。
【Bright Kids Garden】
英語保育に取り組むBright Kids Gardenは北九州市内の環境学習施設、SDGs関連団体、国際協力機構との連携の他、県外のSDGs関連の絵画コンテストや海外の自然キャンプに積極的に参加しています。
また国際的な教育支援事業団体のご協力で、工作やメッセージ交換を通して海外の小学校や幼稚園との交流を実施しすることで、パートナーシップを広げています。
【株式会社スマイルあわじ】
株式会社スマイルあわじは新エネルギー革命会に属し、活動を通じて同業種・異業種間の連携を強めており、持続可能な開発目標の加速を目指してます。
新エネルギー⾰命会とは、再生可能エネルギーの普及を現場から支える地域に根ざした販売店・施工店の団体です。2021年4月時点で全国約90社の会員が在籍し、最新の政策動向や新商品、売り方や技術に関する情報などWebセミナーを中心に研鑽を積んでいます。一つの企業だけでなく、競合同士が協力することでさらなる発展に繋がります。
こうした企業同士の連携によってお互いに利他の精神の元、パートナーシップを通じて取り組んでおり、「再生可能エネルギー100%」の目標達成を掲げています。
SDGs目標17は上記でも触れた「資金」「技術」など各ターゲットがあるように、目標達成に向けて取り組む必要があります。しかし、まずはパートナーシップというキーワードをもとに小さなことから始めることも目標達成に繋がるのではないでしょうか?
SDGsに関連する団体に積極的に参加したり、所属したりとわたしたち一人一人が無理のない範囲で地道に行動し続けることが大切です。何よりもまずSDGsの掲げる目標それぞれに興味を持つことも私たちができることの第一歩と言えるでしょう。
日本は幸いITも発展し、SDGsについて調べることも参加組織を探すことも容易にできます。世界規模の大きな問題ですが、まずはここの取り組みにフォーカスし参加してみましょう。
とても身近なパートナーシップをテーマに目標が掲げられているSDGs目標17『パートナーシップ』は、誰でもスタートアップとしてこれから始められると感じた方も多いのではないでしょうか?
現状の問題だけに着目するのではなく、持続可能な活動を考え、実行すれば未来に繋がります。また何か新たな取り組みや大きな活動ができなくとも、すでに活動している取り組みに参加したり、小さなことから行動に移せば、SDGs目標17である『パートナーシップで目標を達成しよう』の目標達成に近づきます。
・SDGsに興味があるけれど何から取り組めばいいかわからない方
・今後活動の幅を増やしスタートアップとして強い思いを形にしたい方
はその思いで一歩踏み出し、問題解決に向けて共に活動していきましょう。
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SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう|一人では生きていけない人間が、今誰かと自分にできることを見つけ、実行していくには。